30:グロッタ地下遺構

 翌日に開催された決勝トーナメントの第一試合は、ハンフリー、イレブンチームと、ビビアン、サイデリアチームだった。グロッタが誇るお色気美人コンビに会場は大盛り上がりだ。

 だが、見かけに騙されてはいけない。ここまで勝ち上がってきたその実力も確かなもので、ビビアンは高火力の魔法でイレブンたちを苦しめ、サイデリアは投げキッスで行動不能にした上でかえん斬りで一方的に攻撃してくるのだ。

 最初こそ多様な攻撃に防戦一方だったイレブンたちだったが、耐えて耐えて凌いでいれば、やがて先に限界が来たのはビビアンだ。魔法使いも、MPが切れてしまっては物理で殴るしかなくなる。おそらく短期決戦といきたかったのだろうが、イレブン、ハンフリーが粘り強く耐えたため、それが勝敗を喫した。

「何よ~! イレブンもハンフリーもあの二人に見とれすぎ! 勝ったから良かったものの……」
「一時は本当にどうなることかと思いましたわ」
「まあ、オレほどではないにしても、あのハンフリーって奴も上手くイレブンのカバーに入れてるんじゃねえか?」

 その後数試合を挟み、やがて準決勝が始まった。第一試合はイレブンたちとレディ・マッシブ、マスク・ザ・ハンサムチームである。

 別段侮っていたわけではないが、見た目、言動共に異色なコンビに毒気を抜かれ、少し気が緩んでいたのは事実だろう。開幕と同時にマスク・ザ・ハンサムの二刀流のブーメランが突き刺さり、レディ・マッシブの遠慮のない火ふき芸でようやく目が覚めた。それからはイレブンたちも気を取り直し、真剣に対峙する。

 攻撃力と守備力を上昇させる名乗り、攻撃しつつも自らをも回復させるミラクルソード。バランスの良い戦い方をするレディ・マッシブは後回しにし、先にマスク・ザ・ハンサムから攻め立てた。ブーメランを使い、後衛から攻撃してくる彼の懐に入ることができれば後はもう時間の問題だ。

 イレブンのかえん斬り、ハンフリーのタイガークローで仕留められ、マスク・ザ・ハンサムは倒れた。

「やあん、容赦ないわね、二人とも!」

 一人残ったレディ・マッシブだが、彼もなかなかしぶとい。名乗りを上げ、守備力をガチガチに固めた上で攻撃に回られると、一人とは言え、それでも火力が馬鹿にならない。上やくそう、ベホイミで何とか凌げば、ついにはレディ・マッシブも膝に手をつく。

「や、やるじゃない、イレブンちゃん……」
「勝者! ハンフリー、イレブンチーム!」
「シルビアさんも手強かったわね。パートナーがハンフリーじゃなかったら厳しかったかも」
「負けてしまいましたが、シルビア様も楽しそうなので良かった……のでしょうか?」
「そういや、ハンフリーが試合前に飲んでたのは何だったんだ?」

 いよいよ残すは決勝戦のみとなった。相対するは、もちろんあの特別招待枠チームである。

「よろしくね」
「お手並み拝見といこうかのう」

 最初から戦闘態勢を取る女武闘家に比べ、あまり積極的に戦闘には入らない様子の老人。だが、それでも彼が攻守共に優れた魔法の使い手であることに変わりはない。女武闘家が危機に陥った時に、すかさず唱えるベホイミ、ドルマ、ラリホーはどれも厄介なのだ。イレブンたちは先に老人を倒すことを決め、二人で集中攻撃に臨んだ。

 さすがの近接の猛攻には耐えられないか、ジリジリ後退し、老人の息が上がってきたところで、すかさず女武闘家が間に入る。そして始まったイレブンと女武闘家の一騎打ち。彼女の激しい足技に、カミュと同じようにイレブンも防戦一方になる。

 彼女が勢いをつけて足を振りかぶった時、イレブンは大技に備えて腕でガードしようとした。その瞬間だった。唐突に女武闘家の動きが止まったのは。

「そ……そのアザは!」

 やがて、女武闘家たちの様子を窺い見た老人の動きすら止まる。これを好機と捉え、ハンフリーは勢いをつけて老人に飛び膝蹴りを決める。彼は尻餅をつき、そのままがっくり動かなくなった。

「どこ見てんだ? 試合中だぜ、お嬢さん!」

 ウィングブロウを女武闘家に叩き込み、彼女が怯んでいるところにイレブンのかえん斬り。

 巧みな回避術と足技でこれまで地に伏すことのなかった女武闘家がついに倒れた。イレブン、ハンフリーの優勝が決まった瞬間だった。

「やりましたわね、お姉様!」
「これで虹色の枝はあたしたちのものよ!」
「ハンフリーさんのものでもあるけど……。交渉してどうにか譲ってもらえるよう頼まなきゃ」
「孤児院経営のために賞金が必要だって話だろ? お金を工面しとかねえとな」
「せっかく優勝したのに、結局お金~?」

 はああ、とベロニカはため息をつく。ホムラの里から随分長い道のりだった。努力の末ようやく枝が手に入ったというのに、今度はお金が必要になるとは。

 嘆く四人を置いてけぼりに、ステージでは優勝カップを持ったハンフリー、イレブンが皆に讃えられているところだった。つつがなく表彰式が行われるはずだったのだが――突然ハンフリーが胸を押さえ、苦しみだした。

「うっ……!」

 そのまま優勝カップを取り落とし、地面に倒れ込んだハンフリー。すぐに担架が呼ばれ、彼は屋内へと運ばれていった。

 優勝者の急変という異例の事態に、闘技場はしばらく混乱したままだった。

 ひとまず受付ロビーへ行くと、ちょうどイレブンとシルビアの姿があった。どうやら、ハンフリーに命の別状はないのだが、表彰式については彼の様子を見て後日行うということだ。

「連戦の疲れが出たんでしょうね」
「心配ね……。すぐに元気になればいいけど」
「そうよ、イレブン! ハンフリーさんのことは残念だけど、でも優勝おめでとう!」

 キラキラの笑顔でベロニカが祝う。そうだそうだとダイアナたちも慌ててお祝いの言葉を述べる。何はともあれ、一応無事に枝は手に入ったのだ。これまでの苦労が報われた。

「闘技場運営の厚意で今日も宿に無料で泊まれるらしいぜ。全く、優勝賞品といい宿といい、グロッタがいかに武闘会にかけてるかが分かるよな」

 時間ももう遅かったので、その日は簡単に食事を済ませてすぐ寝ることにした。だが、イレブンたちがベッドに入って間もなく……。

「ロウじゃよ。おぬしらに用があって来たんじゃ。開けてはもらえぬか?」

 部屋をノックする者がいた。女武闘家のパートナーだ。ロウは、部屋にイレブン、カミュ、シルビアしかいないのを見て、他の仲間たちも呼ぶよう頼んだ。そうして集められた仲間たちに話して聞かせることには。

「姫が行方不明になってしまってな。町中どこを探しても見つからんのじゃ」
「もしかして、闘士の行方不明事件に巻き込まれたんじゃ……!」

 ダイアナが一番に声を上げる。ロウは物憂げに頷いた。

「その可能性は高いのう。そこで相談なんじゃが……おぬしら、姫を探すのに協力してくれぬか?」
「もちろんです! ね、イレブン?」

 ダイアナが問いかければ、イレブンも力強く頷く。ロウはホッと顔を綻ばせた。

「ふむ、恩に着るぞ。大会優勝者のおぬしとその仲間たちがいれば百人力じゃ。姫が消息を絶ったのはハンフリーの孤児院の近くじゃ。まずはそこに行ってみるとしよう」

 そうしてイレブンたち七人は夜のグロッタへ足を踏み出した。夜も遅いというのに、見応えのあった武闘会の興奮故か、まだ出歩く人は多い。

「それにしても、あんなに強い人でも捕まっちゃうなんて、誘拐犯は相当の手練れよね」
「私たちも気を引き締めて行かなければなりませんわね」

 住宅街まで降りると、孤児院の方が騒がしいことに気づいた。今にも泣き出しそうな女の子から話を聞いてみるに、なんと、ハンフリーまでが忽然といなくなったというのだ。

「ハンフリーまで!? 一体何が起こってるの?」
「体調が万全じゃないハンフリーさんまで狙うなんて最低だわ」
「でも、ここにはたくさん子供がいるんだぜ。犯人はどうやってハンフリーを連れ去ったって言うんだ?」

 カミュの疑問に答えられる者は誰もいない。そのまま孤児院の地下へ降りていくと、中庭の壁にポッカリ穴が開いているのが見えた。どうやら、そこから更に下へと続く階段が伸びているようだ。

「忽然と消えた姫にハンフリー。そして孤児院に突然現れた階段……。偶然にしてはできすぎているのう。姫がこの場所にいる可能性は高い。さあ、ここを降りてみようかの」

 階段の先は、薄暗い地下遺構になっていた。あちこちに蜘蛛の糸のようなものが張り巡らされており、移動するたびに身体中にそれがくっつき、非常に不快だ。

「まさか孤児院の下にこんな場所があるなんてな。まるで迷宮みたいに入り組んでやがる。こりゃ迷子になったらヤバそうだな」
「何が嫌って、この辺りに糸を吐くような魔物がいないことよ。きっと、奧にとんでもない化け物級の蜘蛛がいるんじゃないかしら」

 ベロニカの不穏な予想は残念ながら当たってしまった。

 遺構の最奥、扉を回し開くと、女武闘家を抱えたハンフリーと、そしてとんでもなく巨大な蜘蛛の魔物がいたのだ。

「アラクラトロ様! 新しい獲物を連れてきました!」
「シュルルルル……。今日の獲物はそやつか。ほほう、これは極上の女闘士だな。そやつのエキスも絞り出してやろう。ハンフリーよ、我に差し出すのだ」
「まさか、ハンフリーが誘拐犯だったって言うの!?」

 ベロニカが驚きの声を上げる。ダイアナはすぐにでも女武闘家を助けに行こうとしたが、ロウがそれを制止する。

「それには及ばぬよ」

 ハンフリーが地面に下ろした女武闘家に手を伸ばした途端、彼女は突然身を起こし、足技でその手をいなしながらすくっと立ち上がった。

「ついに姿を現したわね。わざと捕まった甲斐があったわ。十六年前に町を襲った魔物の群れはグレイグによって倒されたと聞いていたけど、生き残りがこんな所にいたなんて」
「ふむ、姫よ。ご苦労であったな」

 ロウが女武闘家の隣に並び立った。それに続いてイレブンたちも駆け寄る。

「ハンフリーよ、すまんがおぬしの部屋を調べさせてもらった。決勝戦の直前でおぬしが飲んでいたもの……。あれこそが闘士たちから絞り出されたエキスだったのじゃな」
「そうか……俺の部屋に侵入したのはあんたらだったのか……」
「その通りだ、人間よ」

 シュルルル、とアラクラトロは糸を吐いた。

「十六年前、我は憎きグレイグによって傷を受けた……。その傷を癒やすためのエキスを集めるためにこの男を利用したのだ。強い人間のエキスを飲めば我が傷は治る。そのエキスを人間が飲めば無敵の身体になれる。その誘いにこの男は乗ったのだ」

 天井から吊された糸の固まり。時折もぞもぞと動くその中身は、皆これまでハンフリーが誘拐してきた闘士たちだったのだ。

「……勝ち進んで金を手に入れるためには強者のエキスが必要だったんだ。孤児院を守るためなら何だってするぜ」

 俯いていたハンフリーが、急に意志のこもった瞳で顔を上げた。

「すまない! この秘密を知られたからには、お前たちを生かしておくわけには――うっ!」

 表彰式の時のように、ハンフリーは再び胸を押さえて地面に膝をついた。

「くそっ……。こんな時に……」
「おぬしの身体はあのエキスのせいで既にボロボロじゃ。そうして立っていられるだけでも奇跡と言えよう」
「情けないな……。これも魔物の力に頼った報いか……」
「これ以上は使い物にならんか。所詮は軟弱な人間よ。ならばこのアラクラトロ様が直々に貴様らを始末してくれるわ!」

 アラクラトロがイレブンたちの前に立ちはだかる。女武闘家がすかさずその背後に回り込んだ。

「私は皆を救出する! 魔物の方はあなたたちに任せたわ!」
「生かしては帰さん!」

 先攻を取ろうとしたアラクラトロだが、それよりも先にカミュが動き、ヴァイパーファングで切り込む。

 うまく先攻が取れたカミュではあるが、アラクラトロもなかなか素早い。死グモのトゲを放ち、全体攻撃を仕掛けてきたかと思えば、メダパニーマを仕込んでくる。まさか立て続けに攻撃がやってくるとは思わず、カミュ、ダイアナ、ベロニカがこんらんに陥る。

 ダイアナがイレブンに矢を放ち、ベロニカがダイアナに杖で攻撃し……と一時戦況が大混乱に陥ろうとしていた時、ロウがキアラルを唱え、一気に皆の状態異常が回復する。

「ロウちゃん、助かったわ~! イレブンちゃん、今のうちよ!」

 シルビアのバイシオンを受け、イレブンがかえん斬りを放つ。どうやらアラクラトロは炎が弱点らしく、猛々しい悲鳴が響き渡った。

「回復はお任せください!」

 セーニャのベホイミに体力を回復してもらいつつ、ベロニカがメラ、シルビアが火ふき芸で攻め立てた。

「おのれ……!」

 突然アラクラトロが怪しい動きをした。ハッとしたシルビアが皆に注意喚起する。

「またあのトゲが来るわよ! みんな身構えて!」

 間一髪、イレブンとシルビアは盾でトゲの攻撃を防いだものの、他の面々は飛んできたトゲに為す術もなく身を切り刻まれる。

「いったあ……!」
「これで終わりと思うなよ!」

 大きな口を開け、アラクラトロは大量の糸を絡みつけてきた。回復陣を狙ったらしく、セーニャ、ロウが糸に足を絡みとられ、動くことができない。

「イレブン! やってやろうぜ!」

 だが、やられてばかりもいられない。イレブンとカミュのれんけい技でアラクラトロの足下に火炎陣を敷いた。これでしばらくはアラクラトロもあまり派手な動きはできないはずだ。

 アラクラトロが怯んでいる隙にベロニカがルカニを唱え、物理攻撃のお膳立てをした。すかさずダイアナが足の関節を狙いすまして毒矢を放てば、かいしんのいちげきと共に毒を仕込むことができた。アラクラトロは体勢を崩し、怯んでいる。

「カミュちゃん!」
「ありがとよ、おっさん!」

 バイシオンで攻撃力を高めてもらい、カミュがタナトスハントを決めた。

 体力も限界近いアラクラトロは、なおも足掻こうとしたが、動こうとするたびに足下を焼かれる魔方陣や、遠距離からのイレブン、ベロニカ、ロウの魔法攻撃についに耐えきれず、その場に崩れ落ちた。

「これで一件落着だな」

 見渡すと、女武闘家が最後の一人を救出しているところだった。皆気を失っているようだが、命に別状はないらしい。

「おぬし、どうしてこのようなことを……」

 ロウがハンフリーの前に立つ。ハンフリーはがっくり項垂れていた。

「仕方なかったんだ……。俺のような三流闘士の稼ぎでは子供たちを養うことができなかった……。ここは孤児院の真下に当たる場所でな。ある日金が底をつき、頭を悩ませているとアラクラトロの声が聞こえてきたんだ。力が欲しければ我の元に来いと……。仮面舞踏会で賞金を稼ぐために、俺は力を手に入れることにした。奴の道具になる道を選んだ……」

 拳を握り、震わせるハンフリーも、その取引が真っ当でないことは理解していたのだろう。しかし、孤児院を守るために彼は決断せねばならなかったと。

「その決意を真っ当な努力に向けず、魔物の甘言に乗ったのはおぬしの弱さ。しかし、まだやり直せるはずじゃ。わしはここの町長に伝手があってのう。孤児院については何とか手を打つよう働きかけよう。だから安心して人生をやり直すがよい」

 ロウの柔らかな笑み、言葉にハンフリーは目を見開く。涙を流し、ついにはその場に崩れ落ちた。

「すまない……本当にすまなかった……」

 彼の泣き声が地下遺構に響き渡る中、続々と闘士たちも目を覚まし始めた。

「具合はどう?」
「大丈夫……。あなたが助けてくれたの?」
「彼らと一緒にね」

 女武闘家はイレブンたちを指し示す。闘士たちが次々に感謝を述べる中、カミュは目を覚ましたばかりのベロリンマンを助け起こした。

「大丈夫か?」
「君が助けてくれたべろ~ん? 助かったべろ~ん!」
「あんた、なんでハンフリーに捕まったんだ? まさか、あの後ずっとあそこで食べてたわけじゃ……?」
「そのまさかべろ~ん! 夢中になって食べてたら、いつの間にか夜中になってて、家に帰る途中捕まったべろべろ~ん」
「だからほどほどにしとけって言っただろ?」
「べろろ~ん……」

 しょんぼりしているベロリンマンと呆れた様子のカミュ。話を聞くに、いやに仲が良さそうだ。一体いつの間に……?

 不思議に思って見ていたら、カミュがダイアナに気づく。そして照れ笑いを浮かべた。

「こいつにぶんしんのコツ教えてもらってたんだ。オレは代わりにケーキを奢ってやってな」
「それで仲良くなったのね」
「まあな。誰かさんみたいに嘆いてばかりじゃいられねえからな」
「あっ、ひどい! 私だってもう落ち込んでないわ!」
「どうだかな?」

 からかうようにカミュが笑うので、ダイアナはツンとして顔を逸らした。だが、それでも次第にゆるゆると口角が緩んでいくのを止められはしない。

 カミュもそうなのだろう。締まりのない顔を自覚しつつ、それを周りに見られないよう下を向く。

「ちょっと悔しかったんだ。本当はトーナメントを順調に勝ち上がって、決勝戦でイレブンと戦うってのもいいなって思ってたから。ほら、あいつとはまだ直接やり合ったことないし、シルビアじゃねえけど、白黒つけたかったのもあるしさ」
「…………」
「でもまさか予選でやられるなんて――いや、侮ってたわけじゃねえんだが、あんまり実力に差があったもんで、落ち込んでたところにあいつに挑発されて……。まあなんというか、お前の言う通り、卑屈になってた。こんなんじゃ、イレブンと戦っても勝敗なんて決まってたかもってな」
「そんなこと……」

 ダイアナの言葉を、カミュは首を振って遮る。

「でも、オレにはオレの戦い方がある。お前のおかげでちょっとそれが分かった気がする。ありがとな」

 いつもの眩しい笑顔に、ダイアナはうんうん頷いた。

 ――カミュが元気になって良かった。

 そうホッと息をついていたダイアナは、女武闘家が自分の方を見つめていたことに気付かなかった。